訪日消費、年3兆円超へ 7~9月、客数・金額とも最高 円安・免税拡大追い風 中国客頼み、持続力懸念も 2015_10_22 日本経済新聞 朝刊

訪日消費、年3兆円超へ 7~9月、客数・金額とも最高
円安・免税拡大追い風 中国客頼み、持続力懸念も

 

2015/10/22付
日本経済新聞 朝刊 転載

 

訪日外国人による消費が力強さを増している。観光庁が21日発表した7~9月の消費額は前年同期比82%増の1兆9億円となり、四半期として初めて 1兆円の大台にのった。訪日客が534万人と最高を更新し、1人当たり支出も前年同期比18%増えた。円安や免税品の拡大を背景に通年の消費は3兆円を超 える勢いだが、中国景気の減速でどこまで持続するかは不透明だ。

銀座で買い物を楽しむ訪日中国人客ら(東京都中央区)

旅行消費額は1~9月の累計で前年同期比77%増の2兆5900億円に達し、過去最高だった昨年の通年実績(2兆円強)をすでに上回った。観光庁の田村明比古長官は同日の記者会見で「今年の消費額は3兆円を超える見通し」と述べた。

消費額が増えた最大の理由は訪日客そのものの増加だ。日本政府観光局(JNTO)が同日発表した9月の訪日客数は前年同月比47%増の161万人。観光庁 によると今年1月から累計は10月9日時点で1500万人を突破。昨年の通年実績(1341万人)を上回り、年間では2000万人の到達が視野に入る。

訪日客1人当たりの旅行支出も増えている。中国人客は7~9月に前年同期比19%増の28万円を支出。このうち14万円を買い物代に充てた。観光・レ ジャー目的の中国人の日本での宿泊日数は平均6.1泊となり、前年同期の5.7泊から拡大。旅行期間の長期化が1人あたり消費の増加につながったとみられ る。

小売りの売り場では日本人の消費者より訪日客が目立つ。日本百貨店協会がまとめた9月の訪日客の購入額は前年同月の2.8倍。家電や衣料品などに限定されていた免税対象商品が、14年10月に化粧品や食料品など消耗品にも広がった影響が大きい。

高島屋は中国の国慶節(建国記念日)に伴う大型連休(10月1~7日)の期間に、中国人客による免税売上高が前年同期の2倍を超えた。スキンケア商品を中心とした化粧品が好調で、全体の4分の1を占めた。

宝飾大手のミキモトでは銀座本店(東京・中央)の7~9月の免税売り上げが前年同期に比べて2割増えた。日本産の真珠を使った宝飾品が人気。「数千万円のネックレスも売れており、旺盛な訪日客の需要は変わらない」(同社)という。

三陽商会の銀座の直営店「三陽銀座タワー」(東京・中央)では、ビル全体の売上高の半分以上を訪日客需要が占めている。素材や縫製を国内で手掛けるコートが中国人などに人気だ。

高級品ばかりではない。靴販売大手、エービーシー・マート(ABCマート)は中国人が決済に使う銀聯カードの取扱高が9月単月で前年同月比4倍以上に増えた。

ただ中国景気の減速で、この流れが今後も続くかどうかは不透明だ。訪日客消費は為替の影響が大きいとみられ、みずほ証券は「1%の対元での円高で訪日客数は0.6%減り、1人あたり消費は0.8%減る可能性がある」と分析する。

訪日客消費の47%は中国人が担うだけに、田村観光庁長官は「(中国訪日客)一辺倒では持続的ではない」と警戒する。

これまでの訪日客増は中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)で韓国旅行を敬遠した中国人が流れてきた面もあった。

ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎氏は「韓国を訪れる中国人観光客は9月に日本を上回るまで回復しており、今後は競争が激しくなる」とみる。