日米独、IoTで融合 2015_10_22日経産業新聞_転載

日米独、IoTで融合

 

2015/10/22付
日経産業新聞 転載

米東海岸のサウスカロライナ州グリーンピル。森林に閉まれた場所に米ゼネラル・エレクトリック(GE)の代名詞といえるガ又タービン工場がある。その一角でサッカー燭ほどの広さの建屋の建設が急ピッチで進んでいた。日月に稼働を予定する「アドバンス卜・マニファクチュアリングセンター」だ。
「ジャーナリストが入るのは初めてだ」。案内してくれたのは先端ものづくりの開発担当者、カート・グッドヲィン氏。内部では風力売電の羽根などを製造できる広大な窓闘が広がる。間端には広い個室が多数並び、中ではデlタ感知能力の高いセンサーや自動化技術の開発を進めている。
カー卜氏は「ブリりアント・ファクトリl」という言葉を何度も口にしたυ 工場の機械や異なる部門をネットワークでつなげ、センサーで集めたデータを元に設備の稼働を最適化する。あらゆるモノがネットにつながるIoTで中核となるサービスだ。
クラウド活用
米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は世界に130ある工場のうち90工場でGEのソフトウェア「Predix(プリデックス)」を使い、工場の危機管理を始めた。
センサーを取り付けた機器からデータを世界中の向上~国境を越えて集め、生産するシャンプーや洗剤などの品質管理に役立てている。データは5年以上保存し、不良品の生産状況などを過去にさかのぼって検証できる。GEはPredixをクラウド上で活用する仕組みを整えている。利用企業はデータ保存のため自前でサーバーを持つ必要がない。P&Gのバイスプレジデント、ジム・フロンティヤー氏は「我々の事業規模だとデータ容量に耐えきれない。クラウドは便利でより高いレベルのデータ解析も可能になった」と話す。
P&GはIoTを設備の稼働管理に活用。部品交換タイミングや故障の前兆などをデータ解析で検知して適切な処置を施し、予期しない機械の故障や停止を従来に比べて10~20%削減することに成功したという。
IoTの活用は「インダストリー4・0」の本場ドイツでも加速している。フランス国境に近いドイツ南西部のホンブルク市。ボッシュは昨秋、トラクターの油圧機器などを生産する工場を刷新し、コの字形をした新ラインを稼働した。
それまで20年近く前に発売した定番品から新製品まで、形や重さの異なる200種類の部品を7つのラインで生産していた。これを部品と機械、従業員がお互いに「会話」をしながら1本のラインで生産できるようにした。
「実は目新しい技術を使っているわけじゃない。既存技術の組み合わせで新しい価値を生んでいる」。同工場の技術部門幹部、マティアス・メラー氏は打ち明ける。すべての部品にRFIDタグが取り付けられ、従業員やロボットに作業の指示を出す。まるで「まな板のコイ」だった部品が調理場の板長に料理法を支持するようだ。
つくる部品に応じて機械は最適な工程を選ぶ。従業員が使うネジやナットは緑のランプが点灯し、誤った部品を選ぶと赤が点灯する仕組みだ。
メラー氏は「不具合はゼロにはならない。あらゆる作業のデータを集め、学習している」と話す。
従業員の情報は無線通信「ブルートゥース」でラインに送られ、作業指示の言語を変えたり、熟練度が低ければ映像を映し出して説明したりする。例えば若い従業員であれば照明の明るさを2割落とし省エネにつなげる。生産効率は従来より1割向上した。メラー氏は「これから顧客との受発注システムと結び、24時間以内に納入する次の段階に移る」と話す。

仮想が現実に
第4次産業革命をけん引する米独の企業が国境を越えてIoTを活用し、製造革新技術の融合が進む。ボッシュはGEなど米企業主体に発足した「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム」に参画。IoTを活用して航空機部品を生産する取り組みで連携している。
日独連合で切り込もうとするのがDMG森精機だ。「マシン4.0」。10月上旬、ミラノで開かれた工作機械の見本市「EMO」でこんな新製品を出展した。仮想空間とリアルのものづくりが結びつく「サイバー・フィジカル・プロダクション」を具現化した。
組んだのは軸受け大手、独シェフラー・工作機械に60個以上のセンサーを内蔵し、温度や素材の状況など逐一集める。
軸受けは自動車~航空機、風力発電機等顧客ごとに細かく用途が異なる。こうした情報をクラウドで管理し、シェフラーの世界中の拠点屋顧客と結び、在庫やエネルギーの効率化につなげようとしている。森雅彦社長は「シェフラー以外も提携を広げていく」と語る。
産業版IoTの本命である自動車産業。ボッシュは自動車の誕生から150年の節目となる2036年までに全く新しい未来の自動車工場を作る「アリーナ2036」と呼ぶ構想を掲げ、ドイツの産学官と組んで研究を進めている。
ただ独フォルクスワーゲン(VW)の不正問題が微妙な影を落とす。VWもインダストリー4.0の推進約トして本社工場などにモデルラインを導入し、傘下の独アウディはロボットと人が共生するラインを開発してきた。不正を受けて投資計画の見直しを決め、IoT関連投資が一時的に冷え込む可能性がある。
4.0の基本理念は「オープンイノベーション」。自社の課題解決屋新しい事業機会の創出について社内外で情報を共有する。「全てつながるものづくりは、そもそも隠れて不正をすることが難しい」(ボッシュ関係者)。ドイツではVWの問題は「上意下達の社風が原因」と受け止められ、4.0とは無関係という見方が一般的だ。

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