日本電産が増産投資、スマホ部品に1000億円 高機能機種用 10月22日(木曜日)日本経済新聞

日本電産が増産投資、スマホ部品に1000億円 高機能機種用

 

2015/10/22付
日本経済新聞 電子版 転載

 

日本電産の永守重信会長兼社長は21日、スマートフォン(スマホ)向けの振動部品の増産に今後数年間で1000億円超を投じる方針を明らかにした。米アップルの新型スマホに新たに供給を始めたとみられる部品は今後、高機能スマホを中心に長期的な市場の拡大が期待できると判断した。大規模な先行投資に踏み切り、2020年度の達成を目指す連結売上高2兆円を担う主力事業に育てる。

「ハードディスクドライブ(HDD)用モーターの生産を立ち上げた時と同じような感じだ」。永守社長は振動部品について、数千億円の投資をすることで日本電産の高成長の源泉となった主力事業になぞらえる。

アップルがスマホの最新機種「iPhone6s」に新たに採用した振動部品は繊細な振動で利用者に様々な情報を伝える「触覚デバイス」と呼ばれる。高機能スマホに広く採用される可能性が高く、17年の市場規模は6000億円に達する見通し。手触りの感覚も再現できることから、車や医療、ロボットの遠隔操作への応用も期待されており、永守社長は「今後10年以上は市場成長が続くとみている」と話す。

17年度のシェア5割を目指し、15年度中には新たに120億円を投じ、中国のHDD用モーターの工場を振動部品用に転換。ベトナムなどの子会社工場でも増産体制を整える。16年度以降も年200億~300億円規模の投資を続け、新工場の建設も検討。韓国サムスン電子などのスマホへの採用も狙う。

「技術革新が起きている市場に向かっていく」と話す永守社長が成長戦略のもう1本の柱とみるのは車載部品だ。今期は設備投資額を期初計画の120億円から180億円に増額。ポーランドの工場でブレーキ機構をシンプルにできる電動ブレーキの生産を増強する。電動ポンプや車載センサーといった「車の電子化や自動運転などこれから伸びる市場に特化」(永守社長)し、20年度に14年度の5倍の売上高1兆円を目指す。

もともとの技術は日本電産の代名詞であるM&A(合併・買収)や中途採用で獲得した。車載部品では日産自動車系の旧トーソクやホンダ系の旧ホンダエレシスなどを次々に買収し、人材も日産などから採用してきた。

振動部品の技術もバイブレーション用振動モーターで高いシェアを持つ富士通系の旧コパルや旧三洋電機系の旧三洋精密が開発していた。旧三洋電機出身の音響分野の技術者が中心となって製品として磨き上げてきた。

モーターなどをインターネットにつなげ、不具合の予知や効率化などにつなげる「IoT(インターネット・オブ・シングス)」への対応でも同様のシナリオを描く。

主体と期待するのはシャープ出身者だ。通信技術畑中心にすでに部長級で約30人を採用。希望退職者などを対象に100人超まで増やす。事業を率いるのは元シャープ社長の片山幹雄副会長。永守社長は「シャープのどこにどんな人材がいるか熟知している」と片山氏の人材活用に期待する。

価格が見合わず、4~6月期に7件を見送った中大型のM&Aは「株価が落ち着き、この1、2カ月でだいぶ案件が動き始めた」(永守社長)。新たな資金需要が生まれる可能性もあり、成長分野への投資を維持するには既存事業の着実な利益貢献が欠かせない。

中国の成長鈍化などで景気に不透明さが増すなか、国内事業に比べると利益率が劣る海外の家電や産業分野の収益力をどう強化するかが課題となりそうだ。(太田順尚)

 

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